上半身裸の女性を至近距離からジップ・ガン(パイプに弾を詰め、手で直接叩いて発射する武器)で殺すシーンでは、肌がむき出しの胸に直接着弾する。絶命寸前の女性が乳房のはだけた状態でしばらく部屋を歩き回ったのち、遅れて血がピューピュードクドク流れ出る描写はもはやアート。スピルバーグの狂気を感じざるをえない。

「画的な面白さ」の徹底追及は時に、「さすがに不謹慎」と言われることもある。たとえば『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)では、住人に模したマネキンがそこここに置いてある砂漠の町にインディが迷い込むが、実はその町は核実験の実験場。爆発のカウントダウンが始まり絶体絶命となったインディは、民家の冷蔵庫(鉛でできているので放射能を通さないという設定)に入って扉を閉める。そして爆発。ニュース映像などでよく見る、核爆発が家やマネキンを吹き飛ばす凄惨な映像。冷蔵庫はふっ飛ばされて宙を舞い、地上に落下。扉が開き、そこから無事のインディがごろんと出てくる。

 アイデアも画面も、面白いは面白い。しかしその激しい衝撃でインディが大怪我を負わないはずはないし、爆風でふっ飛ばされた程度の距離では、冷蔵庫から出たインディが大量の放射線を浴びてしまうはず。被爆国民である我々からすると、さすがにフィクションですからとは片付けられない、モヤっとした不謹慎さが漂っている。