思ってたのと違う

 あらゆる監督作品に「家族愛」テーマを必ずと言っていいほど差し込んでくる巨匠スティーヴン・スピルバーグが送る「初の自伝的作品」(チラシのキャッチより)だけに、最新作『フェイブルマンズ』のチラシや予告編観を見た観客の多くは、こんな内容を期待するだろう。

・普遍的な映画愛とノスタルジックな銀幕ロマンが全開の、スピルバーグ版『ニュー・シネマ・パラダイス』
・スティーヴン少年が憧れの映画業界に足を踏み入れるまでの紆余曲折の道のりを、実際の作品や人物を登場させて余すところなく描く
・スティーヴン少年の最大の理解者にしてその才能を幼少期から見出していた母親が、彼を全力で応援し暖かく見守る感動物語

 もちろん、これらの要素が含まれていないわけではないが、本作の通奏低音はこれではない。「軸」は別に設定されている。だから映画が始まってしばらくすると、大方の観客はこう感じる。

「あれ? 思ってたのと違う……」