本作は、半世紀以上のキャリアを重ね老境に達したスピルバーグの、満を持した「告白」なのだろうか。生ぬるい「映画愛」なんぞで自分は映画を撮っていない、こちとら悪魔と契約して半世紀以上も修羅道をひた走ってるんだ――という開き直りなのか。いずれにしろ、フィルムの暴力性にスピルバーグがここまで自覚的であることを、ここまで直截に表現したという点において、『フェイブルマンズ』は驚きの1本だ。
フィルムの暴力性の犠牲者となったミッツィとローガンのインパクトがあまりにも強すぎたためか、それだけでは良き読後感を望めないと判断した(と思われる)スピルバーグは、ラストにわかりやすく「映画っていいもんですね」的なエピソードを用意する。実在の映画人が登場し、若きスピルバーグを投影したサミー青年に映画のなんたるかを指南するのだ。
ただ、このくだりはあまりにもとってつけた感が強い。典型的な「イイ話」すぎる。むしろスピルバーグの「お前ら、どうせこういうのが観たかったんだろ?」という「悪い笑い」すら目に浮かぶ。いや、スピルバーグ好きとしては、むしろぜひそうあってほしいのだが。
『フェイブルマンズ』
配給:東宝東和
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:トニー・クシュナー
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン、ガブリエル・ラベル
原題:The Fabelmans 配給:東宝東和 上映時間:151分
2023年3月3日(金)より、全国公開!
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