その千代女が結婚したとされるのが(望月家本家の)望月盛時という男性でした。しかし、彼は永禄4年(1561年)の「第四次・川中島の戦い」で討ち死にしてしまいます。そこで独り身となった千代に武田信玄が与えたミッションが、身体能力が高く、頭も切れる美少女たちを集め、歩き巫女の姿をした女忍者集団として育成することだったそうです。
そして信玄の甥にあたる信雅(信玄の同母弟・信繁の子)が当時、望月家に養子として出されており、この信雅=千代女の夫・望月盛時であるとの考えもあります。残念ながら信雅が戦死したのは天正3年(1575年)の「長篠の戦い」であるとされ、「第四次・川中島の戦い」の約14年も後にあたるため、別人であるとみるのが自然ですが、いずれにせよ信雅が望月家の養子になったという事実は、信玄が忍びの者と関係がある望月家と親戚関係になることを強く望んだと見ることができ、注目されるポイントです。
「怪しい存在」だった歩き巫女と、「忍び」の関係
信玄は諏訪大社の歩き巫女の存在に注目し、同社の御札を日本各地に売り歩いていた彼女たちなら怪しまれることなく日本各地に派遣でき、諜報活動などもできると考えたそうです。
ドラマの千代は、空誓上人(市川右團次さん)が家康による年貢の強制徴収に怒り、一揆を起こす決意を見せると、立ち上がって「みんな、仲間の門徒衆に触れ回りな! おのおの戦道具を持って寺に集まれと。進む者は往生極楽! 引く者は無間地獄よ!」と民衆を煽っていました。また、本證寺の屏風裏で、彼女が吉良義昭(矢島健一さん)に酒をつぎながら「本来、この三河国の主となるべきお方は吉良様でございますからねぇ」とおだて、松平昌久(角田晃広さん)と目を合わせて含み笑いをするシーンも印象的でしたね。夏目広次(甲本雅裕さん)の裏切りをそそのかす動きを見せる場面もありましたし、やはり千代は望月千代女をモデルとしたキャラクターで、武田信玄からの指示を受けて敵国である三河に内乱を生じさせ、弱体化させることで軍事侵略を容易にする密命を帯びていたという設定なのではないかと想像されます。