ついさっきまで意気揚々だった人間が急速に「萎える」感じ。痛いところを突かれるも、苦し紛れに弁解する惨めな男の様子。『ごっつええ感じ』が様々なコントで精密に再現しようとした「滑稽なほどばつの悪い状況」が思い起こされる。
今作『逆転のトライアングル』は、モデルの男女カップルや金持ち連中の乗り込んだ豪華客船が沈没し、乗客と乗務員の一部が島にたどりつく物語だ。
島では文明社会のヒエラルキーが文字通り「逆転」し、文明社会でもてはやされていた「カネ」や「美」の価値が地に堕ちて、別の価値が浮上するというエキサイティングな状況が描かれる。モデル業界やインスタグラマー、俗物な金持ちに対する皮肉と毒舌の切れ味は、今までのオストルンド作品にも増してあからさまだ。
本作におけるトカゲのおっさんは、モデルの男・カールだ。映画冒頭、カールはモデルでインスタグラマーの彼女・ヤヤと、レストランで揉める。会計の段になっても財布を出そうとせず、「ありがとう」とだけ言うヤヤ。ヤヤより収入の少ないカールは「そんな風に言われたら払うしかない」「昨夜“明日は私(ヤヤ)がおごる”と言った」「テーブルに置かれた伝票が目に入らなかったとは言わせない」「金への執着じゃない、ただの意見だ」とぐちぐちと抗議。うんざりしたヤヤがいくら払うと申し出ても、もはやへそを曲げたカールは承諾しない。
【こちらの記事も読まれています】