ストーリーの肝はまさしく、姑息で惨めなクリスティアン(=トカゲのおっさん)の観察記。プライドは高い、しかし器は小さい。彼の被る不幸が、彼の人間としてのしょうもなさを残酷にあぶり出してゆく。
同作はまた、「気まずさ」「ばつの悪さ」「白けた空気」「居心地の悪さ」「ドン引き」「不条理」といった状況を、矢継ぎ早に提示する。それを笑えばいいのか、不快だとして眉を潜めればいいのかは観客の自由。笑えば不謹慎だが、不快だと感じるのは自分に鑑賞リテラシーが足りないのかもしれない。そもそもこの映画はブラック・コメディなのか、社会派ドラマなのか? そういった観客側に湧き上がる戸惑いも含めて、『ごっつええ感じ』のある種のコントを観たときの気分に近い印象が、同作にはあった。
オストルンドの前々作『フレンチアルプスで起きたこと』(14)には、さらに輪をかけた“トカゲのおっさんみ”がある。
※『フレンチアルプスで起きたこと』
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