それをもって、本作は同性愛を肯定しつつも、宗教そのものは否定していない。それは現代にも通ずる、抑圧的な社会に生きる女性にエールを送る、フェミニズムのメッセージにもつながっている。同様に、実際の裁判を扱い、女性の差別的な言動への激しい怒りが込められた、リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』を思い起こす方も多いだろう。

 もっと下世話な感じで言えば、「クズな男や酷い社会に負けずに(たとえ客観的には間違った行動でも)自分の道を信じて突き進む女性は、超カッコいいぞ!」という、ヴァーホーベン監督のこれまでの作品にもあった、女性へのあこがれや敬意をわかりやすく押し出した内容とも言える。

 つまりは題材と作家性が見事に一致しているというわけだが、さらに良い意味で悪趣味で赤裸々なエログロ描写と、圧倒的なエンタメ性をもって示してくるのも、ヴァーホーベン監督の「らしさ」であり、支持したいことだ。