男が⽀配する社会で生きる、女性へのエール
ヴァーホーベン監督は、本作の主人公であるベネデッタを、自身の監督作『氷の微笑』『ショーガール』『ブラックブック』『エル ELLE』のヒロインたちの「親戚」だと語っている。それは自身の映画で常に女性が中心にいることと、以下のベネデッタの姿に感銘を受けたためだという。
「この時代、女には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、⼦供を産むだけの存在とみなされていたにもかかわらず、ベネデッタは手段はどうあれ、完全に男が支配する社会で、才能、幻視、狂⾔、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性だった」
民衆の支持を得て、修道院長に就任する。男性権威主義的な当時の社会において、それは革新的なことだったのだろう。そのベネデッタは、幼い頃から聖⺟マリアやキリストのビジョンを見続け、聖痕が浮かび上がりイエスの花嫁になったとも報告もしている。
それが権力を手にするための嘘だったのか、はたまた幻影だったのかはわからない。だが、少なくともこの映画では、それを否定的には捉えていない。むしろ、ベネデッタはキリストを心から信じ、彼を一種のヒーローのようにみていた「純粋さ」が語られている。
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