◆頼れる人が誰もいない
身を隠すためには、教団とまったく無縁の人を探すしかない。数年間の薄給奉公生活で、金もない。そんなKさんが頼ったのはマッチングアプリだ。セーフティネットとしては不適切だが、誰もが適切な支援にすぐつながることができるわけではない。
「借金してカプセルホテルを転々としながらマッチングアプリで出会った人を頼り、泊まる場所を提供してもらいました。いまで言うところの、パパ活ですね。お金をくださいと積極的に言っていたので、逆に何ごとかと心配され、幸い危険な目に遭うことはありませんでした」
「常日ごろ、組織の活動を外部に漏らすなと指導されていたのがしみついていたので、『仕事が嫌になり逃げて自責の念にかられている』と説明してましたね。そうすると、一日過ごせるだけのお金をくれる人や、食事を提供してくれる人も現れます。パパ活を公言してのマッチングだったので、最悪殺される可能性も考えていたのですが……。希死念慮は強かったものの、怖くて死ねなかった。だから自死よりはマシ、どうなっても構わない、といった気持ちでした」
そうした生活を送るなかでも、「組織から逃げた自分の人生には破滅しかない」「自分は救われない」という恐怖がつきまとう。そして結局、教団へ戻るのだ。脱走して帰ってくる信者は少なくないようで、「組織を裏切った人の更生プログラム」も用意されている。