◆古参信者の説得で心折れる

そこでKさんはまず、同居している古参信者に相談した。同級生は社会に出て仕事をしてスキルを身につけ、休暇には海外旅行も行って楽しく暮らしている。それなのに自分はみじめで苦しい、とぶちまけた。

「古参信者には、こう返されました。あなたの友だちみたいなことをしていると生産性がない人生になる。そこを目指しても幸せになれない。もっと上の、別の次元を目指さなくてはいけないと。私は疲労で判断能力も鈍っていたんでしょうね。そう説明されると、納得してしまうんです」

それでも日々苦しさが募り、ある日寮へ戻らず、音信不通を試みた。しかし頼れる相手はいない。地元の友だちには「宗教」と言えば引かれてしまう。ひとり親である母は教団の信者ではないが、教団の教えに従い疎遠になっている。