「どこで会いました?」

「渋谷で一緒に飲んだじゃん」

 渋谷のイメージは合っていたようだ。

「え? 一緒に飲んだ?」

「そう。○○と○○もいたじゃん」

 まったく身に覚えがない。しかも僕は酒が飲めないし、付き合いも悪い方なので、飲み会に参加することは考えられない。さらに名前が出た○○という芸人は知り合いではあるが、プライベートで遊んだことはない。明らかに嘘だ。

「嘘じゃん」

「嘘じゃないし。会ったじゃん」

「イメージと違うかもしれないけど、俺お酒飲めないし、飲み会とか行かないのよ」

「いやいや、会ったじゃん。○○だよ。本当に覚えてない?」

「もういいから」

「会ったらわかる。絶対覚えてるはず」

「嘘だから」

「会ったらわかるから、会って」

「嘘だし」

「嘘じゃないし」

 この「嘘じゃん」「会ったらわかる」という無意味なラリーを数回繰り返しているうちに、僕の中で“え? 何この自信。本当に会った事あるのかしら”という気持ちと“もしこれが嘘だったらこの子凄いな”という気持ちが芽生え、僕はいつの間にか「これだけ言ってるんだから会ってみたい」とすら思っていたのだ。