これはあくまでも僕の個人的な独断と偏見なので、芸人全てに当てはまるというわけではないが、僕自身は少なからず「お金持ちになりたい」とか「チヤホヤされたい」という動機は持ち合わせていた気がする。

 そんな僕も例に漏れず若手芸人らしく、嗜む程度に、地味に、粛々と遊んでいたことがある。しかし、遊ぶのは芸人だけではない。芸人遊びをする女性もいるのだ。

 今回は、僕が若手芸人時代に遊ばれてしまったお話をしたいと思う。僕がある程度テレビに出させてもらって、少しだけチヤホヤされていた夏の日、携帯電話に着信があった。知らない番号からだ。僕は何も考えずに電話に出た。相手は女性だった。

「あっもしもし? 檜山さん?」

 どうやら間違い電話ではないようだ。

「あ、はい」

「久しぶり○○です」

 ○○という名前を頭の中で探ったが、まったく覚えのない名前だった。

「あの、すみません誰ですか?」

「え? ○○だよ。覚えてないの?」

 声の感じからたぶん若く、真面目というよりは、当時の渋谷センター街で地べたに座っているような雰囲気がする。