見終わった後に、明るい気持ちになれるJOJO作品

 主人公の近藤猛を演じた小出恵介は、俳優デビューする前は渋谷のイメージフォーラムに通い、自主映画を撮っていたそうだ。つまずいた者も優しく受け入れる映画館を舞台にした物語は、小出にとって再スタートを切るのにふさわしい作品だろう。

 物語後半、近藤は映画を通して「過去の自分」と向き合うことになる。大切な人たちとの別れもあった。近藤の脳裏に、苦い記憶が蘇る。だが、映画自体は決して重くなりすぎず、ユーモアとペーソスが程よくブレンドされたエンタメ作品として仕上がっている点も城定作品らしい。

久保「学生時代から映研で映画を撮り、名画座やピンク映画館に通っていた城定監督なので、彼の作品は自然と映画への愛が溢れたものになっているのだと思います。それでいてあまり湿っぽくならず、さらりと描いていても、観た人それぞれに何かしら伝わってしまうのが城定作品の摩訶不思議なところです。映画を見終わった後には、少し前向きな気分になれる。明日もがんばろうかなという気持ちになる。それが城定作品のいちばんの魅力だと思います」

 城定作品は面白い作品が多すぎるため、何から観ればいいか悩む人もいるかもしれない。本作と同じように映画制作を題材にしたコメディ映画『ホームレスが中学生』(08)やピンク映画の秀作『悦楽交差点』(16)や『犯す女 ~愚者の群れ~』(19)などはAmazon Prime Videoでも配信中なので、未見の人はぜひチェックしてみてほしい。きっと、JOJO作品の虜になるだろう。そして、「銀平スカラ座」にも足を運びたくなってしまうに違いない。

『銀平町シネマブルース』
監督/城定秀夫 脚本/いまおかしんじ
出演/小出恵介、吹越満、宇野祥平、藤原さくら、日高七海、中島歩、黒田卓也、木口健太、小野莉奈、平井亜門、守谷文雄、関町知弘、小鷹狩八、谷田ラナ、さとうほなみ、加治将樹、片岡礼子、藤田朋子、浅田美代子、渡辺裕之
配給/SPOTTED PRODUCTIONS 2月10日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©2022 「銀平町シネマブルース」製作委員会
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