映画館を舞台にした『銀平町シネマブルース』は、映画館シーンを埼玉県川越市の川越スカラ座で、それ以外のシーンは千葉県木更津市などでロケ撮影している。主要キャラクターだけで20人が登場する群像劇を、12日間で撮り切ったのも城定監督ならではの手腕だろう。

久保「スカラ座で上映される劇中映画が2本ありますが、この劇中映画2本も城定監督自身が撮影初日にまとめて撮っています。劇中映画も手を抜かず、細かいところまでしっかり撮るところが城定監督らしいですね。その分、無駄なシーンはいっさい撮らない。彼が助監督として育ってきた頃のピンク映画は、フィルム撮影でした。余計なシーンを撮ると、フィルム代が嵩んでしまいます。だからなのか、台本の段階から無駄なシーンは省き、無駄なカットは撮らず、撮影現場でも必要以上に悩まない。撮影現場でシーンの繋がりも頭の中では構築されているので、編集でも悩むことが少ないのだと思います。城定監督は編集作業もとても早い」

 「城定監督は早撮りが得意」と言われているのは、これまでの制作環境がそうさせていたようだ。環境という意味では、出演者たちから自然な演技を引き出すことにも優れている。オリジナルビデオ映画では、演技経験のほとんどないグラビアアイドルやセクシー女優たちを魅力的に撮り上げてきた。城定作品のヒロインたちは、みんな名女優に思えてくる。ベテラン俳優も新人俳優も、城定ワールドではみんなキラキラと輝くことになる。