――とはいえ事業者からすれば、いくら公共政策であるといっても自治体と心中するわけにはいかないですよね。
小笠原 2022年5月、北陸鉄道が資本金を減資し、自治体に「上下分離方式」を提案するという発表がありました。これは非常にショッキングなニュースです。上下分離方式とは、鉄道の運行は事業者が行い、線路や運行に付随するインフラは行政が保有する形式です。資本金を減資することで中小企業になり、法人事業税などの税負担を減らすことができます。これが意味するのは、北陸の代表的な都市である金沢市の公共交通機関を担う事業者ですら、そこまで追い詰められているということです。
――金沢市は人口約46万人、観光人気が高く旅行で訪れる人も多く、栄えている地方都市のイメージです。そんなところでも立ち行かなくなっている。
小笠原 いよいよ自治体側も、事業者との議論のテーブルにつかなくてはならなくなっています。JR各社はこれまでずっと自治体さんに「議論に参加してください」と呼びかけてきました。でも席についてもらえなかったんですね。なぜなら、席についたらその時点で「どう廃止するか」の話にしかならないと自治体はわかっているから。最近ですと、留萌線の段階的廃止についてJR北海道と自治体が合意しましたね。
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