――KPIを設定しなければならない。
小笠原 でも、地方に行くとわかりますが、コミュニティバスは乗客が少ない路線があるんですよ。それは当然のことで、乗客が多ければ一般的な乗合バスの路線があるはずなんですから、ここで乗客数を評価の対象にするのはよく考えれば不思議な話です。バス会社は「こことここを結べば儲かる」と考えて路線を敷きますが、コミュニティバスは「必要があるから運営する」という発想ですよね。これは昔から公共交通機関の考え方としてよく言われる話で、東京圏でいうと東京メトロと都営地下鉄の違いがわかりやすいと思います。
東京メトロはその成り立ちからして準民間企業で、たとえば銀座線の当初の売りのひとつは沿線の百貨店を地下鉄が結んだということでした。繁華街に向かう足として使ってもらって稼ごうという路線です。一方、東京都交通局が運営する都営地下鉄は、はっきり言ってあまり利便性のいい地域を走っていないですよね。
――住んでいないと行かない駅が多いイメージですね。
小笠原 それは都営地下鉄が、東京都の政策において「ここに鉄道が必要だ」となって敷かれた路線だからです。郊外のニュータウンや高速鉄道が未開通だった地域の住民を都心に運ぶ路線がなければならないからつくられたといえばいいでしょうか。もちろん東京の地下鉄建設は大きな政策の中で検討されてきたのであまり単純化はできませんが、でもこのように、ひとくちに「公共交通機関」といっても、その中には民間の経営センスと行政の施策という部分が入り混じっているんです。その点には注意が必要です。
しかしいずれにせよ、現時点で地元の公共交通機関にどれくらい税金が入っていて、どれくらいの人が乗っているのか、知らない人が大半だと思います。いくら「必要だ」という声があるとはいえ、その成果とともに年間数百万円、数千万円をかけてコミュニティバスが赤字を生み続けているとなれば、直接の利用者ではない地元住民の方が「やめてしまえ」と言い出してもおかしくない。