――宅地開発をして住人を増やし、平日は彼らを職場に運んで休日は沿線の娯楽施設で遊んでもらうという、阪急電鉄創業者の小林一三が生み出したビジネスモデルですね。
小笠原 そうです。でもそれは、ある程度以上の乗降客数を前提として成り立っていて、つまり東京を筆頭とした大都市圏における稼ぎ方です。それができない地方での事業は、鉄道会社からすれば鉄道事業だけで勝負を迫られてゆくわけです。
一方で、近年地方の鉄道は乗客の減少もあってダイヤ改正によって本数が減ったり車両数が減ったりして、混雑率が上昇しています。そうすると地元の方からは「電車の待ち時間が長くなった」「以前はゆったり座れたのに」と利便性が下がったことに不満が出るわけです。実はもうそこまで切り詰めないと路線を維持できない状況になっていることを、市民の側が認識できていないケースが多々見受けられます。
――JR九州社長が記者会見で「『鉄道、ずっと頑張ってくれよな。でも俺たち、実際、日頃乗る機会全然ないもんな』という地元の方がたくさんいる」と発言していました。各地でこういう状況が起こっている?
小笠原 私は仕事柄あちこちの地方に行きます。自動車免許を持っていないので、どこにでも電車とバスを乗り継いで行くんですね。そうやって向かった地方創生などの会議などで「今日、ここまで公共交通機関に乗ってきた人はいますか?」と聞くと誰も手を挙げません。でもみんな、公共交通機関をなくしてほしくはない。各社が悩んでいるのは、まさにそこですよね。鉄道もバスも、主に高校生が通学のために利用しているだけで、大人はみんな自家用車で移動しているような状況があるわけです。そんな地域の現実の中で、今までのものを全部維持するのかどうか、住民の方も含めて考えなければならない。
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