――どれくらい以前から、議題として存在していたんですか?

小笠原 私が知る限り、20年くらい前から地方の役所の会議などで耳にしていた話です。わかりやすいのがバスですね。地方のバスは早い段階から路線の運営に補助金が入るようになっています。バス会社としては当然、利用者が減って儲からなくなった路線は本数を減らしたり廃線にしたりしたい。でもそれがなくなると困ってしまう地元の方がいる。だから「運営を続けてください」と自治体が補助金を出すわけです。そうした背景は、地元の方たちの間でもあまり知られていないんじゃないでしょうか。理解を得たり議論を起こすということでは、自治体の側からもっと「公的な支援を入れて運行しているものです」と広く提示してきてもよかったんじゃないかと、今更ながら思います。

――なぜ今そう思われるんでしょう。

小笠原 今回のお話の肝でもあるのですが、公共交通機関というものに対する地元の方たちの認識を変えていくことが重要だからです。まず前提として、公共交通機関というものは「儲かる」とも言えるし「儲からない」とも言えます。

 ひとつには、稼ぎ方の問題があります。今や鉄道事業だけで業績を維持している鉄道会社はそう多くないはずです。鉄道会社は基本的に、鉄道事業を行うのとともに沿線を開発して周辺の事業を一体化することで成り立っています。ターミナルの駅に行けば電鉄系の百貨店やスーパーがあったりレストランがあったり、路線終端近くの郊外に遊園地やリゾートホテルを建設して運営したり、グループ傘下の不動産会社が建てて売っているマンションがあったりしますよね。