「乗らないけど維持してほしい」それではもう成り立たない

――2022年は、地方の公共交通機関の存続に関する報道が相次ぎました。4月にJR西日本が不採算17路線の収支を初めて発表したのに続いて、7月末にはJR東日本も赤字路線の収支を初公表しました。

小笠原 あの発表は、いま地方の公共交通機関に何が起こっているか、非常にわかりやすく見せた出来事でした。JRさんはこれまで大都市部の鉄道事業等で得た利益で地方の路線を維持してきた構造があります。今回、不採算路線の収支発表に踏み切ったのは、それがもう立ち行かなくなっていることを示していると思います。

――8月29日に地域公共交通総合研究所(岡山市)が発表した調査結果によれば、アンケートに回答した公共交通事業者120社のうち約2割が、コロナ禍による乗客減で債務超過に陥っているとのこと。東京に住んでいるとなかなか実感が得られませんが、かなり危機的状況になっていることが伝わってきます。

小笠原 まず言っておきたいのは、この問題はコロナ禍以前からずっと存在していたということです。ですが、この連載で何度も言ってきた通り、あらゆる分野でコロナ禍が時計の針を大きく進めてしまった。それによって一気に前面化してきているんです。