◆サイン済みの離婚届を置いて家を出た

出産したときも、義父母は孫の顔さえ見に来なかった。それから1年、彼女は友人たちの協力を得てアパートを借り、娘とともに家を出た。テーブルの上にサイン済みの離婚届を置いて。

「会社では違うフロアだったのでめったに会わないけど、たまに顔を合わせても知らん顔されました。離婚に関しても反応なしだったので、調停を申し立てたんです」

離婚届
調停は不成立、審判へと移り、2年かけてようやく離婚が成立した。その過程で夫や義母の暴言も炙(あぶ)り出された。

「友人たちが協力してくれて、夫の非道なおこないが社内でも噂になって。夫は離婚成立前に退職しました。退職する日にたまたま社内で出くわしてしまったんですが、夫は『おまえに会ったのがオレの不幸だった』と。近くでそれを聞いた同僚が『いいかげんにしろよ、かっこ悪いぞ』と言うほどでした」

◆今は、復讐よりも優先したいことがある

最初のうちは養育費も振り込まれていたが、それも今は途絶えているという。ただ、カホさんが会社を辞めなかったため、母娘ふたり、なんとか暮らしてはいる。

「夫は全然子どもに興味がないんでしょうね。会いたいとも言ってきません。そんな人からお金だけもらったってしかたがないと思っています」

復讐してやりたい気持ちはある。夫を社会的に抹殺したい、義父母も一緒にとは思う。だが、今は「娘との生活を大事にすることが最優先」と割り切っているとカホさんはつぶやいた。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio