ーー『エンドロールのつづき』は、第95回アカデミー賞において国際長編映画賞のインド代表に選ばれ、結果的にショートリスト(予備候補)に残るという快挙を遂げました。アカデミー賞のインド代表に選ばれて本ノミネートされた作品は、2001年の『ラガーン』以降一度もない状況ですが、昨年は『RRR』や『ブラフマーストラ』といった、全米ボックスオフィスに入った作品も多くありました。今年1月に米国の350館で限定公開された『Waltair Veerayya』も全米トップ10に食い込むなど、インド映画に対しての認知度も増しています。ナリン監督としては、手応えはどうだったでしょうか。 

ナリン監督:ノミネートや受賞に関しては未知数ですが、感触としては良かったように思えました。アメリカのロサンゼルスでショーキャンペーンに参加してきたばかりですが、今までのオスカー受賞者や俳優、監督、映画関係者などたくさんの人たちに作品を観てもらうことができました。

 私の映画は、大がかりなプロモーションでバズらせることよりも、口コミで広がっていくタイプの作品だと思っています。レースにノミネートされたり、受賞することはもちろんうれしいことですが、作品をより多くの人たちに観てもらうきっかけになることこそが大切だと思っています。

 今回ショートリストに挙げられた15作品は、どれも良い作品ばかりで競争相手として不足はありませんでしたが、残念なこともありました。キャンペーンを行って、ほかの監督と作品と競い合うのかと思っていたら、競争相手はスタジオや配信プラットフォームであったのです。

 そこに挟まれて少しナイーブな気持ちにはなりましたが、大手企業のようなお金をかけたキャンペーンはできないので、できる限りのことはできたのかなと思っています。

ーーインド国内では、どのような反響がありましたか?

ナリン監督:実は……『エンドロールのつづき』がショートリストに選ばれた際には、インド本国でも物議を醸していました。大衆受けする映画が選ばれなかったことに一部の映画ファンが脅迫やサイバーアタックを仕掛けてきたのです。ディールも身の危険を感じ、ボディガードを付けなければいけない状態に陥ったこともあります。

 ただ、今では、インド国内での評価も変わってきました。インドでもたくさんの方々が観てくれて、スターシステムやスタジオの付いていない、歌や踊りのない作品でも良い作品が作れるんだということを理解してくれるようになって、インドの国内からも多くの応援をいただいています。