ーー配信サービスやSNSの普及に伴って、インドでは全体的に女性の地位向上やミソジニー(女性蔑視)の問題を描いた作品が年々多くなってきました。ナリン監督の『怒れる女神たち』(2015)もいち早くそういったテーマを扱っていたと思いますが、ナリン監督としては、今後こういったジェンダー問題のみならず、インドの社会問題を扱う予定はありますか?

ナリン監督:そういったテーマをまた扱いたいとは思っています。かと言って、アクティビストにはなりたいわけではないのです。自分は常に良いストーリーを作りたいと思っていて、そこに社会問題が偶然にも重なるということがあったとしても、最初からプロパガンダや情報を押し付けようとする説教くさい映画を作りたいとは思いません。

 ただ、自分が世界や社会を変えられるんだと勘違いはしたくはないけれど、結果的に影響を与えるとしたら、それはうれしいことです。

『怒れる女神たち』はまさにそういうケースでした。インドでは男性が主体の作品が多く、特に当時は、女性が主人公の映画はめずらしかったのです。仮にジェンダー問題を描くにしても、舞台が田舎の村になってしまうことが多く、あくまで田舎や保守色の強い地域の問題として描かれてしまっていました。

 しかし当然ながら、ムンバイやデリー、コルカタにも女性たちは住んでいるわけで、そういった人たちが取り上げられていないことも気になっていました。

 そんな中で、2012年にデリーでインド集団強姦事件が起きてしまった。そのこともあって、より都市部の女性の声を映画にしたい、自分たちにも何かできないかと思ったのです。