私はかつてパリにも住んでいましたが、映画が大好きなお国柄のフランスでも、インド映画はほとんど上映されていない状態でした。それこそサタジット・レイやグル・ダットの監督作品がイベントで上映される程度でした。

 スターシステムが確立されてから、インド映画といえば「歌と踊り」が主流のイメージとして広まっているのもありますが、それを上回るグローバルインパクトを与えられていないのも原因のひとつだと思います。

 ただ、新たな試みとしてステレオタイプから脱しようとしているインド映画人が多くいるのも事実ですし、そういった作品は世界に羽ばたいていくでしょう。私が監督した『エンドロールのつづき』も日本で公開されることになったわけですし、国境というものが意味を持たない時代になりつつあると思います。

 もうひとつの問題は、インドではヒンディーやテルグ、タミル、ベンガル映画業界のように、複数の映画業界が言語や地域によって存在していて、それぞれの業界の目指すところや野心がまったく異なっています。