命は救われたものの、それでも実衣の失望は深そうでしたが、政子はかつて大姫(南沙良さん)が唱えていたおまじないを(相変わらず間違った覚え方で)実衣と唱和し、彼女を元気づけようとしていました。三谷版の政子は「聖母」のような存在といえるかもしれません。

 『鎌倉殿』以前のドラマなどの映像作品での描かれ方では、後鳥羽上皇に対して立ち上がろうと御家人たちに訴える政子の演説には“男勝りの女性政治家”のイメージしかありませんでしたが、『鎌倉殿』の政子を見ていると、その人間性によって、演説ひとつで坂東の御家人たちを奮い立たせることができたのかもしれないと思わされます。今回は、次回の第47回で出てくるであろう政子の演説とは実際にどんなものだったのかを考えてみようと思います。

 第47回のタイトルは「ある朝敵、ある演説」であり、その予告映像でも政子が御家人たちに直接語りかける姿があったので、次回のドラマの見どころは政子の演説となるでしょう。

 しかし、鎌倉幕府の公式史である『吾妻鏡』では、政子は御家人たちを庭に集めたものの、自身は御簾の後ろに控えていただけで、声を発することはなく、彼女が書いたスピーチ原稿を(ドラマではすっかり姿を見なくなった)安達景盛が代読したと書かれています。