大抵の夫はすぐ決断したくないので「もう少し様子を見ようよ」と言い、大抵の妻はそれに我慢できず離婚を選ぶ。特に女性の場合、再出発は早ければ早いほうがいいからだ。「様子を見る」時間などない。
一方、ハードな断捨離を選ばされたのがパードリックである。
その顛末は凄まじい。具体性を避けて描写するなら、「人は大事なものを手放さないためには、別の信じられないほど大事なものを失わなければならない」だ。夫婦関係を継続させるのは、これほどまでに大変なことなのだ。
本作は着地点の読めないミステリーであり、時おりブラック・コメディであり、シーンによっては身の毛もよだつホラーだったりする。それはつまり、夫婦そのものだ。