これは「何のたとえ話」なのか?

 『スリー・ビルボード』で2017年の映画賞レースを総なめにしたマーティン・マクドナー監督が、またも小難しい映画を撮った。第80回ゴールデン・グローブ賞でミュージカル/コメディ部門の作品賞と男優賞、そして脚本賞の最多3冠に輝いた『イニシェリン島の精霊』である。

 舞台は100年前のアイルランド、ど田舎のイニシェリン島という架空の島。ここに住む中年男・パードリック(コリン・ファレル)が、長年の飲み友達である音楽家の初老男・コルム(ブレンダン・グリーソン)から突然、絶交を宣言される。しかしパードリックは何ひとつ心当たりがない。「何かしたなら言ってくれ」と聞いても、「何もしてない。ただお前が嫌いになった」と言われてしまう。