◆男の監督に女性の体はわからない
現場の雰囲気は映画に映り込むと彼女は信じている。だから全員が一丸となってモチベーションを保てるように心を砕く。撮影期間、彼女は誰よりも最後まで現場にいて、助監督より早く現場に入っている。すべてのリスクは自分で背負うと決めているからだ。
「ピンク映画を撮り始めたときに私が思ったのは、女の性を女の手に取り戻すこと。ピンク映画はどうしても男性の観客が多いけど、それでも映画の中で女性に主導権を握らせたかった。それまでのように男が突っ込めば女は喜ぶみたいなものは作りたくなかった」
彼女のピンク映画では、女性が自ら性を求める。そして彼女は女性の体のパーツをドアップで撮った。
「女の体はきれいでしょ、と見せたかった。男の監督は遠慮するからドアップで撮れないんですよ。私は乳首の先のつぶつぶや、Tバックからはみ出す陰毛もドアップで撮った。セックスだってピンク映画はあくまでも疑似ですからね、腰振ったってAVの迫力にはかなわない。だからピンクでしか表現できないエロを描きたかった。前戯を中心に触れられて愛されることで、女性の体が弾けていくところを見せた。男の監督に女性の体はわからないんですよ」
それが男性客にも受けたのだ。してやったりと思ったことだろう。浜野監督のピンク映画を観る女性グループもできた。
「生きる上で、エロスは重要だと思う。なくてはならないものでしょう、なかったら楽しくないもの」
――浜野さんにとってのエロス、それも女性のエロスとは。後編でさらに詳しくうかがう。
<写真・文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio