◆助監督デビュー初日に起きた珍事

電話帳で住所を調べ、若松プロを訪ねた。当時、若松孝二といえばピンク映画界の風雲児として人気があった。のちに『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』や寺島しのぶ主演『キャタピラー』などで国内外のさまざまな映画賞を受賞した監督でもある。

その若松氏に「女の助監督なんていらない」とけんもほろろに断られた。それでも彼女は若松プロの近くに引っ越し、無視されてもかまわず通い続け、勝手に掃除したり宴会のための料理を作ったりした。そして3ヶ月ほどたったころ、ようやく助監督見習いとして扱ってもらえるようになった。

その後、助監督となったものの現場についた初日の夜、主演女優と俳優が隣の布団でリアルなプライベートセックスを始めてしまう。

眠らなければ翌日の仕事に差し支えるからやめてほしいと頼んだがやめてくれない。浜野さんは布団を引きずって廊下の隅で眠ったが、翌日、「サード助監督ごときが役者に意見をした」と大問題となった。怒られるだけならまだしも、謝罪しろと言われても納得できなかった。

納得できないことはしないのが浜野さんの生き方。勢い余ってそのまま若松プロを辞めてしまった。