◆いちばんが好き、前例は自分で作る

思い通りにいかないこともあったし、リタイアした時期もある。それでも彼女が負けてたまるかと映画の道を歩き続けたいちばんの原動力は「他に女の監督がいなかったから。誰もいないところにいちばんに乗り込んでいくのがおもしろかったから」だ。

浜野佐知インタビュー202301-1c
「命かけてもやりたいことを見つけなかったらつまらないじゃない? もともといちばんが好きなのよ(笑)。指定席をとっていてもいちばんに並ぶタイプ。前例のないことをやりたい。そのほうが自分の判断ひとつでものごとを変えられるから」

ピンク映画に飛び込んだ最初の女性スタッフであり、女性監督であり、自らの制作会社を作った最初の女性社長でもある。浜野監督のピンク映画は人気を得て、旦々舎の制作本数は年間20本にものぼった。

「私は段取りとカット割りが趣味なんです。プロデューサーをかねているから、映画を撮る段階で、すべてのスケジュールとカット割りが頭に入っている。いつも考えているのは、映画監督って偉そうに聞こえるけど、実際は逆三角形のいちばん下にいるんです。映画に関わるすべての人、小道具のひとつひとつに対しても、すべての責任を負うのは監督。だから相手の心に伝わるような言葉で話し、心に伝わる態度をとる。裏切ってはいけないと思っています」