ーー舞台を監督の少年時代ではなく、2010年代に置き換えたのは、映画がセルロイド・フィルムでの上映を終え、デジタルへ移行したことを描きたかったからでしょうか。また、英語教育の重要性や、保守的な考え方の転換など、インド社会全般の変化を描く側面もあったように感じます。
ナリン:プロットを練っていた当初は、私が実際に少年だった1980年代の物語にしようともしたのですが、モハメッドの視点も描いたほうが興味深いのではないかと思いました。2010年代、彼がデジタル化の波によって映写技師として職を失ったのも事実です。
作中で描いた子どもたちの生活という視点で見ると、こういった地方の小さな村では、80年代でも今でもそれほど変化がありません。それこそお金持ちの子どもであればスマホを持っているかもしれませんが、駅前ののどかな風景や村での生活は、私の子ども時代とそれほど変わっていません。なので、私とモハメッドの物語を、セルロイドとデジタルの移行期に合わせて描いても、違和感はありませんでした。
また10年前といえば、動画配信サービスが普及し始めた頃でもあり、ストーリーテリングの在り方が変化し始めていたので、そこにも触れたかったのです。