表層だけを追うと、大学時代の仲良し3人組が、うまくバブル経済に乗り、自分たちの理想の街をつくろうする夢物語のように感じられる。だが、ヤン刑事が調べていくうちに、その夢物語の裏には歪んだ人間関係があり、犠牲者がいたことも分かる。
台湾時代のジャンを経済的にも精神的にも支えたのは、ホステスのリエン(ミシェル・チェン)だった。彼女の献身さのおかげで、ジャンは不動産王に成り上がることができた。ジャンのビジネスパートナーも務めていたリエンだったが、2006年ごろに忽然と消息を絶っていた。
ヤン刑事の父親も捜査官で、リエン失踪事件を担当していたが、捜査中に事故に遭い、事件は迷宮入りしていた。タンとリンとの間には、ひとり娘のヌオ(マー・スーチュン)がいる。香港の大学に通う現代っ子のヌオも、父親の不審死事件に否応なく巻き込まれていく。「天安門事件」の時代に出会った親たちの因果が、中国30年の歴史と共に子どもたちの世代に大きな影響を与えることになる。
英題となっている「The Shadow Play」は、直訳すれば「影絵芝居」となる。今回のロウ・イエ監督は『天安門、恋人たち』のように直接的には天安門事件に触れていない。だが、天安門事件が登場キャラクターたちの人生を大きく左右したことは、彼の過去の作品を観た者には容易に推測される。