1989年6月、中国の民主化を願い、多くの大学生や市民が天安門前広場へとデモ行進した。ところが、彼らは中国政府から反逆者と見なされ、人民解放軍によって武力鎮圧されてしまう。市民側の死者数は3000人とも、1万人とも言われている。

 皮肉なことに天安門事件後に市場開放が進み、中国バブルが花開くことになる。街は華やかになり、人々の暮らしは豊かになった。だが、ロウ・イエ監督は、天安門前広場で起きた悲劇を忘れようとしない。中国社会が明るくなればなるほど、天安門事件の記憶が強烈なシルエットとして浮かび上がる。

 ロウ・イエ監督の公私にわたるパートナーであり、本作の共同脚本も務めたマー・インリー監督が手掛けたドキュメンタリー映画『夢の裏側』も同日公開される。中国当局から睨まれながら、ロイ・イエ監督が『シャドウプレイ』のロケハンから、脚本の読み合わせ、長回しを多用した撮影、劇場公開に至るまでを追ったメイキング作品だ。

 事前に脚本を提出して許可をもらっているはずなのに、撮影が始まってからもトラブルが絶えない。暴動が起きた広州のシエン(洗)村でロケ撮影を行なおうとしたところ、撮影直前になって地元の自治体がNGを告げる。苦労して撮影を終えても、さらなる難題が待っていた。暴動シーンを大幅にカットしろなど、作品の根幹に関わる検閲指示とロウ・イエ監督は闘うことになる。