補償条件が不十分なため、住民たちは激しく抗議していた。古い建物の撤去に取り掛かろうとする工事作業員や武装した警官隊が入り乱れての大乱闘となる。廃ビルの谷間に瓦礫が渦巻く光景は、さながら戦場のようだ。

 そんな喧騒が続くある夜、再開発の責任者である市役所の職員・タン(チャン・ソンウェン)が廃ビルの屋上から落ち、遺体となって発見される。事故死か自殺か、それとも他殺か。若いヤン刑事(ジン・ボーラン)が捜査に乗り出す。

 亡くなったタンの人間関係は、意外とあっさり判明する。タンは大学時代の1989年に、妻となるリン(ソン・ジア)、親友のジャン(チン・ハオ)と出逢っていた。1989年は「天安門事件」が起きた年だ。多くの若者たちが中国の民主化を求めた熱い時代だった。そんな高揚した空気の中で、タン、リン、ジャンは青春を謳歌した。

 当時のリンは、イケメンのジャンと交際していたが、ジャンが既婚者だったことから、秀才タイプのタンと結婚する。タンは父親が官僚で、将来が保証されていた。リンと別れたジャンは単身で台湾へ渡り、実業家として成功。その後、中国に帰還したジャンは不動産王となり、市の再開発を担当するようになったタンと手を組む。すっかり大人になった3人組は、第2の青春を満喫しているかのようだった。