そして2022年は、2017-18年を起点とした流れが次なる局面を迎えた――まず大局的には、そういった捉え方が可能だろう。なぜなら、今に至る時勢を作った前述のアーティストたちが揃って次の大きな一手を打ってきたからである。

 Awichは『Queendom』で自己批評を突き詰めた上で帝国を築き上げ、ちゃんみなは「Don’t go feat. ASH ISLAND」でいよいよ本格的な韓国進出を果たした。宇多田ヒカルは『BADモード』を、中村佳穂は『NIA』を発表し、もはや“ラップに影響を受けた”という域では語れない極めてエクストリームな実験モードへと突入した。

 2010年代はラップとトラップビートの時代であり、世界のポップミュージック/ラップミュージックがそれによって譜割り/リズム面での影響を受けざるを得なくなったが、ひとまず国内においては2022年でその潮流がひとつの完成を迎えた(あるいは閾値を超えた)と言ってよい。

 では、次なる動きとして顕在化したのはいかなる表現欲求だろうか?以下、7つのテーマに則して論じていきたい。