戦場の場面は2012年の大河ドラマ『平清盛』を彷彿とするような、うす暗く、血なまぐさい色彩で描かれ、かなりリアルに敵兵の息の根を止める様子も見られました。詳細な戦闘描写がある一方で、なぜか家康たちの乗った馬がフルCGであるなど、「?」な部分もあるにはありました。一般的には「ここぞ」というシーンで馬をCGにしたのは、番組の公式ツイッターで説明されている「動物に無理をさせない」という配慮であると同時に、「このシーンは役者の演技に全集中して」という作り手のこだわりなのでしょう。『どうする家康』の独自色は初回にしてすでに出ていた気がします。
しかし、追い詰められないと“やる気スイッチ”が入らない困った性分の家康は、無事に兵糧を大高城に運び込んだ時点でエネルギーが完全に切れてしまったようで、その後、義元が織田信長(岡田准一さん)の手で討ち取られた報せが届くと、混乱する部下たちを見捨て、義元から授かった大事な金陀美具足の兜も城に置いて逃走してしまい、後に「徳川四天王」の一人となる本多忠勝(山田裕貴さん)にムリヤリ引き止められるという実に情けない姿もありました。
義元の死が伝えられた場面はおおむね史実どおりで、家康たちは、今川義元の戦死を同日夕刻になるまで知らなかったとされますから、報せが届いた時、大高城内は間違いなく大混乱となったでしょうね。おまけにドラマでは、信長が大軍を率いて大高城に向かっているとの報せもありました。このときの信長のセリフがなんと「待ってろよ、竹千代(=家康の幼名)。俺の白兎」で、腐女子界隈が一気に沸騰した様子です。しかし、家康の脳内をフラッシュバックしたのは幼少期、織田家に一時的に人質になっていたときの恐ろしい記憶で、それによってさらなるパニックが彼の中で起こってしまいました。