松本潤さんの演技は、いい意味での「驚き」でした。「オレ様」な役柄のイメージが強い松本さんが、瀬名姫(有村架純さん)と人形で遊んでいるほうが楽しそうな若君時代をあまりにイキイキと演じていたのもかなりの衝撃でしたけれど、成長後も「気弱なプリンス」として、求められた役柄を正確に表現しておられました。

 初回において松本さんの「プリンス」ぶりが際立っていると思えたのは、家康の逃走シーンでした。ドラマの構成上、家康が逃走するシーンが2度繰り返されたわけですが、着地に失敗してよろめいたり、不器用さがありつつも、どこかダンスの舞台を見ているような所作の美しさが見え隠れしていたように思います。ジャニーズの教育方針として、歌、ダンス、演技など多角的なレッスンでアイドルの卵を育てていくというのは聞いたことがあって、そういう総合的な経験が演者としての松本さんを、他の俳優さんとはどこか違う空気をまとった「プリンス」として見せることに一役買っていた気がしました。身体の使い方が、どこか演技専門の俳優さんとは違うのですよね。興味深いと思います。

 家康が雄々しく活躍する場面もありました。前回のコラムでおそらく見せ場となるであろうと予測した通り、今川義元からの命令で、織田勢に取り囲まれた大高城に家康主従が結束して兵糧を運び入れるシーンがありましたが、黄金に輝く「金陀美具足(きんだみぐそく)」をまとった家康は、味方を勇気づける存在であると同時に、劇中でも描かれたとおり敵からも狙われやすいわけです。しかし、織田勢から降り注ぐ矢で攻撃されてもなお、頭を下げようとしない姿は実に勇敢で、神々しかったです。