賞レースのシーズンにあわせたような、お笑い関連書の出版ラッシュ。その背景には、近年のお笑いはファンをふくめて「語るもの」「知るもの」という傾向が強まっている部分があるのではないか。

『M-1 アナザーストーリー』(テレビ朝日系)が象徴であるように、芸人たちの裏側にある「熱」「想い」を観る者も共有したいと思えるコンテンツに、お笑いがなったと言える。その点では『Number』による「お笑いをスポーツとしてとらえる」という着眼点は絶妙だったのかもしれない。

 一見、真反対で遠くの位置にあると思えた「笑い」と「感動/涙」が、実は近距離で背中合わせに存在していることを多くの人が知った。また、そのおもしろさに気づいたのだ。

 それは、お笑いがいかにドラマチックであるかにフォーカスをあてた『M-1』の功績である。いや、もしかすると純粋に「笑えるもの」だったものに「感動」というバイアスを加えたことにおいて、罪であるのかもしれない。