10月に『キングオブコント』、12月には『THE W』『M-1グランプリ』の決勝がおこなわれるなど、秋から冬はお笑いの賞レースの本格的なシーズンといえる(『R-1グランプリ』も3月の決勝に向けて冬に予選が始まる)。その盛りあがりに乗ずるように、2022年下半期はお笑い関連の注目書籍が続々と出版された。

『笑い神』『東京芸人水脈史』はお笑いの資料としても最高峰

『笑い神 M-1、その純情と狂気』(2022年11月30日発行/文藝春秋)は、無謀とされた『M-1』第1回開催までの関係者の苦闘と、『M-1』決勝へ9年連続で進出して2010年に優勝を飾った笑い飯のエピソードを軸としており、筆者・中村計の綿密な取材をもとにした力強い筆致に引きこまれる。

 狂気的なまでに笑いにかける笑い飯と、それに食らいつく千鳥のエピソードは特に強烈。両コンビが大阪の劇場・baseよしもとの看板をはっていたときは、「彼女がほしい」といったキャッチーなネタをやると「おもろないやつ」の烙印が押されるほど、笑いに対して緊張感が漂っていたことなど当時の空気感をリアルにとらえており、まさにお笑いルポの最高峰。「週刊文春」(文藝春秋)掲載時から、最新回を読むのをいつも楽しみにしていた。