『笑い神』が『M-1』を起点とする大阪のお笑いシーンの“におい”が伝わってくる書籍ならば、『東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年』(2022年12月10日発行/宝島社)は、1994年に銀座7丁目劇場の座付き作家としてそのキャリアをスタートさせた山田ナビスコ氏の目線による「東京ライブシーン」が克明に記録された、資料としても貴重な内容だ。
ライブシーンの角度から見た2000年代のネタ番組ブームの話は特に興味深く、『エンタの神様』(日本テレビ系)、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)、『爆笑オンエアバトル』(NHK)がライブ芸人たちにどんな影響を及ぼしたのかが記述されている。
意表をついた企画で話題をよんだのが、スポーツ雑誌で『Number』(文藝春秋)が2022年12月1日発売号で『M-1』を特集したことである。中川家、チュートリアル、霜降り明星、ミルクボーイという歴代王者を表紙に配し、『M-1』を「スポーツとしての4分間の競技漫才」とした。
なかでも「[制作スタッフが明かす]日本一の漫才の最高の見せ方。」の項では、M-1がいかにスポーツ性や競技性を強調するルールをもとにしているか、そしてバラエティ番組の作りとは一線を画しているかに着目されている。『ワールドカップ』まっただなかの時期、『Number』が『M-1』をとりあげたのはある意味、“大事件”だった。