グループの支柱・齋藤飛鳥の卒業ソングと表現力
3、4期生の台頭にアンダーの変化……と、乃木坂46はかつてないほどに”新陳代謝”が活発となった2022年。その象徴とも言えるのが、エース・齋藤飛鳥の卒業発表だ。
齋藤は乃木坂46の顔としての立場を一身に引き受け、これまでに15th「裸足でSummer」(16)や、21st「ジコチューで行こう!」(19)など多くのシングルでセンターを経験し、フロントとしても賀喜や中西といった後輩メンバーを支えてきた。
かつてはお姉さんメンバーが多かったこともあり、妹キャラとしての印象も強かったが、後輩が増えてからは裏でサポート役に回るなど先輩らしい一面も。ラジオ番組『乃木坂46の「の」』(文化放送)に遠藤さくらが出演した際には、遠藤がセンターというポジションを不安に思っていたところ、齋藤から「私には申し訳ないって思わないでほしい」と声をかけてもらったというエピソードを話していたように、齋藤はグループ全体にとって支柱のような存在になっていたようだ。
齋藤のラストシングルとなった31st「ここにはないもの」は、齋藤の卒業を優しく送り出していくようなミディアムバラードになっており、齋藤の洗練されたダンスが目を引く。齋藤がセンターを務めた23rd「Sing Out!」(19)は個人的に彼女のベストソングだと感じているのだが、その齋藤の表現力がさらに洗練された形で発揮されているのが「ここにはないもの」のように感じた。先輩たちの卒業ソングは後輩たちが強い思いを込めて歌いつないでいくものとなっているが、同曲もそのような楽曲になるはずだ。
では、23年の乃木坂46はどのようなシーンを迎えるのか。これから期待されるのは、まだ単体としての活動しかない5期生がどのようにグループ全体と関わっていくのかだろう。
5期生の成長は、12月に開催された『新・乃木坂スター誕生!LIVE』で見ることができた。『乃木坂スター誕生!』で多彩な個性を開花させた4期生と同様に、5期生もパフォーマンスに磨きがかかっており、どこのポジションに入ったとしても即戦力として活躍できるポテンシャルを秘めている。32ndシングルではおそらく5期生が選抜、アンダーに入ってくることが予想されるなか、5期生単体の活動で培われたパフォーマンス力を発揮できるのか楽しみにしたい。
そして21年から22年にかけてが乃木坂46の世代交代の過渡期だったとするならば、23年は乃木坂46が新しく生まれ変わり、さらなる発展へと進むタームでもある。それには、5期生との調和が欠かせない。これまでのベースとなる乃木坂“らしさ”は大切にしつつ、新たな挑戦の年になってほしい。