◆ヨネダ2000 「わけがわからない」けど面白い2つの理由

M-1_2022_8番手_ヨネダ2000 ©M-1グランプリ事務局
ヨネダ2000 ©M-1グランプリ事務局
――ヨネダ2000は13年ぶりに決勝進出した女性芸人で、12月10日に行われた「女芸人No.1決定戦 THE W 2022」(日本テレビ)で準優勝したこともあって注目していたのですが、独特な作風のネタでインパクトを残したようにみえます。

<まず「文章での解説をしたくない!」

と、思わせるところがヨネダ2000の最大の魅力だと思います。

審査員のサンドイッチマン富澤たけしさんから、「ランジャタイがいなくてホッとしてたのに~!」という言葉が出ました。確かに、ランジャタイとの共通点を出しながら考えると解説しやすいかもしれません。

とにかく2組の共通点は「わけがわからない」ところですが…、そうなんですが、そこじゃないんです!

2組の共通点、それは、ヨネダ2000の誠さんとランジャタイの国崎さんの、卓越したな表現力なんです!>

――てっきり「わけがわからない」発想かと…。

<不条理なセリフと展開でありながら、瞬間瞬間、何をやっているかはきっちりわかる。イギリス人の群衆の演じ分けと感情の変化、餅つきの合いの手、DA PUMPのKENZOさん…。

お笑いで「わけがわからない」ことをやるときに最も重要なのが、お客さんに「わけがわからなくてもいいんだ!」とちゃんと思わせることです。理解をあきらめさせることが大事なんです。

そのために大事になってくるのが、表現力です。

「目の前で起きていることは間違いではない、ということは、わけがわからないことをやっている!」とお客さんにしっかり認識させること。そうすると、お客さんはちゃんと理解をあきらめ、目の前で起きていることを純粋に楽しむことができます。2組の言っている意味をまともに理解しようとしたら、とんでもなくストレスがかかります(笑)>

©M-1グランプリ事務局 ランジャタイ
ランジャタイ ©M-1グランプリ事務局
<そして、もうひとつの共通点は「相方が共犯者」。ヨネダ2000は愛さん、ランジャタイは伊藤さんですね。

相方がツッコミ役として止めてくれると思いきや、実は共犯者。1人がわけをわからないことをやっているのに、もう1人がそんなに止めない。

「あれ? 隣の人、止めないの?」となり、このことが「わけのわからなさ」を加速させています。お客さんに「わけなんか、わからなくていいんだ!」と思わせる一因となっています>

――ランジャタイは残念ながらM-1グランプリは今年がラストイヤーでしたが、ヨネダ2000は2020年結成で2人とも20代。今後も楽しみです。

<しかし、結成2年で本当にすごいですね。THE Wも含めると、テレビでの勝負ネタが計3本、M-1で最終決戦に残ったとしたら4本持っていることになります!

それこそ、わけがわかりません!>

◆今年はコント師が多かったけれど…

M-1_2022_6番手_男性ブランコ ©M-1グランプリ事務局
男性ブランコ ©M-1グランプリ事務局
――今年の決勝には、ロングコートダディ、男性ブランコとコント師が多く、“音符を運ぶ”など想像力を生かしたネタや演技力を披露し、上位に食い込む結果も出しました。

<「ボケ」「ツッコミ」にとらわれない、さまざま漫才があるのは魅力的ですね。コント師に多く見られるのかもしれません。

「とにかく面白い漫才」を競うのがM-1グランプリです。「面白い」という言葉の中には「こんなの見たことない!」という意味も含まれると思うんです。もちろんそれは、奇をてらうだけでは成立せず、共感を得たり、想像させて楽しませたりと、見ている人との接点を保ちながら成立させるアイデアと表現力が必要になってきます。

コント師の面々に限らず、キュウやヨネダ2000も、「ボケ」「ツッコミ」と言い切れない不思議な魅力を醸し出していました。

漫才に限らず、お笑いのネタは「自分が得意なこと」をやるべきです。喋るのが得意な人は喋ればいいし、歌が得意な人は歌えばいいし、得意なことは特にないけど声だけはでかいんだという人はとりあえず大きな声を出せばいい。

そんななか、ロングコートダディと男性ブランコは、漫才の固定概念にとらわれず「自分が得意なこと」をきっちりマイクの前で表現していたことが、高得点につながったのだと思います>