◆『鎌倉殿』で活躍する二世・三世の役者たち

 前述したように柿澤さんは祖父・曾祖父ともに人間国宝という家に生まれています。祖父の清元榮三郎は清元節三味線方、曾祖父の清元志寿太夫は江戸浄瑠璃の清元節の太夫という彼の血筋から、幼い頃から古典芸能が身近に存在し、舞台に親しんでいたことが容易に想像できます。醸し出されるどこか雅なたたずまいも、生まれながらのものなのでしょう。

 『鎌倉殿の13人』では柿澤さんのように芸事の血筋、すなわち二世・三世役者が、他の多くのドラマに比べ多い印象があります。

尾上松也
写真集『G 尾上松也』(ギャンビット)※画像はAmazonより
 有名どころで言うと中村獅童さん(梶原景時役)、尾上松也さん(後鳥羽上皇役)などの歌舞伎界は当然のこと、哀川翔さんの娘・福地桃子(初役)さん、石橋凌さん・原田美枝子さんの娘・石橋静河(静御前役)さん、故・三国連太郎さんの息子・佐藤浩市(上総広常役)さん、そのまた息子の寛一郎(公暁役)さんなどがいます。

 芸事ではなく政治界ですが、小泉純一郎元首相の息子・小泉孝太郎(平宗盛役)さん、ミュージカル俳優としても名を挙げましたが宮澤喜一元首相の孫・宮澤エマ(実衣役)さんもいますね。

◆趣のある存在感は、大河ドラマと相性がいい

 誰もが柿澤さん同様に、佇まいが上品で風格ある人ばかり。視聴者にとって親が馴染みあるためか若い役者さんでも親しみやすく、彼ら自身からも堂々とした印象も受けます。そんな生まれながらの存在感もあるからこそ、趣と格式ある大河ドラマと相性がいいということなのでしょう。

 一見、単に各界から豪華メンバーが集合しただけにも見えますが、柿澤さんをはじめ、実力はもちろんのこと、佇まいや印象などを考慮したで上で選考されたということがわかります。

 時政(坂東彌十郎さん)の“最後の女”として第42回に登場した磯山さやかさんのように、まだまだ驚きのキャストがサプライズで登場する予感もあります。『鎌倉殿の13人』、最後まで目が離せませんね。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦