「何かを間違えたんだと思う」
40歳が近づいたとき、もう子どもはいいやと気持ちが吹っ切れた。その直後に出会った10歳年下の独身の彼と、今は「まじめに」恋愛をしている。
「タクヤが気づいているかどうかはわかりません。気づかせないようにしているし、タクヤも気づかないようにしていると思う。そこはお互いさまです」
だが彼女はうっすらとわかっている。この不倫の恋が再婚に結びつくことはない、と。今回は本気度が高いが、その情熱もいつか薄れていくだろうと予想している。
「私がいつか恋をしなくなったとき、タクヤか私のどちらかが離婚を言い出すのか、あるいはふたりの両親がいなくなったとき私たちの縁も切れるのか。それともこのまま最後までいってしまうのか。明日は何があるかわからないからなんとも言えませんが、今はお互いに変化を求めていないんじゃないでしょうか」
どちらも遠慮して踏み込めなかった流産後の微妙な関係。あの時期にもし戻れたら、もっと気持ちをぶつけ合いたかったとミオリさんは言う。ただ、そうしていたら、あのとき関係は壊れていた可能性もある。
「ふたりとも自分の悲しみに沈み込んでしまったのがいけなかった。でもどうしたらいいかわからなかったのも事実。何かを間違えたんだと思う」
どうすることもできなかった過去がある。せつなそうに遠くを見つめるミオリさんの目がうっすらと潤んでいた。
<文/亀山早苗>
亀山早苗
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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