流産したことをなじられて
やっと結婚すると決めたとき、タクヤさんの両親は上京、ミオリさんもタクヤさんも不在のまま親同士が再会、ミオリさんの実家に1泊していったという。
「気心も知れているし妊娠したし、結婚するしかなかった。タクヤも私も仕事優先でしたが、つわりがひどかったときはとても優しかったんです。根がいいやつだから。
調子が悪くて会社を休んで寝ていたら、仕事が忙しいのに、わざわざ昼に一度帰ってきてくれたこともありました。『様子を見に来ただけ』と言っていましたが、私がそのころ唯一食べられたグレープフルーツが切れているのを知っていたんです。たくさん買ってきて剥(む)いてくれました。つわりは短期間でおさまったけど、ずっと心配してくれていました」
だがミオリさんは稽留(けいりゅう)流産をしてしまう。初めての妊娠で流産し、2日ほど入院して手術も受けた。
「私はショックで泣いてばかりいました。タクヤも最初は慰めてくれていたけど、だんだん無口になっていって……。『ミオリだけが苦しいんじゃない、オレだってつらいんだよ』と怒鳴って深夜にプイと家を出て行ったこともあります。
でも私はタクヤより自分のほうがずっとつらいと思っていた。タクヤの苦悩は期待が裏切られたものだけど、私は実際、体で体験していることだから」
タクヤさんに対して、思いやりがないとなじったこともあった。
ギクシャクした日々が続いた。それでもそれぞれの実家の励ましがあり、体が回復するとミオリさんも少しずつ前向きに考えられるようになった。
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