もう一度、子どもをと願ったが
「そのころ私、タクヤにずいぶんひどい言葉をぶつけていたみたいです。自分ではよく覚えていないんですが。今までごめんね、もう一度、ふたりで生きていきたいと言ったら、タクヤは『オレもそう思ってる。ミオリの立場になれなくてごめん』と。これで夫婦仲が元に戻ったと思ったんですが、なんだかギクシャクが抜けないんですよね」
ミオリさんが流産したあと、ふたりは寝室を別にしていた。タクヤさんは帰宅が遅くなることもあるのでミオリさんに負担をかけまいと別室で寝ていたのだ。ところがふたりで話し合ったあともタクヤさんは寝室に戻ってこない。
「今、仕事が忙しくて遅くなったり早朝出勤があったりするから、まだ別のほうがいい」というのだ。
「それじゃしかたがないと寝室は別のまま。私は通常勤務に戻りましたが、タクヤは毎晩遅かったですね。出張もあったし、確かに忙しそうだった。
ゆっくり話してないままに週末を迎え、その週末でさえ彼は仕事だと出かける。まったく会話がないわけじゃないけど、お互いに遠慮していたのか、核心をついた言葉を出せなくなっていた。気づいたら、流産してから1年もたっていました」
元気になったミオリさんも、再び仕事に集中している。同じ家にいながら、洗濯も掃除もそれぞれが時間のあるときに自分の分だけするようになっていた。
「ただ、ときどきタクヤは私の実家に行きたがりました。そんなときは昔のタクヤのまま。うちの両親におもしろい話を聞かせたり、くつろいで父とお酒を酌み交わしたり。
タクヤの両親が上京すれば、私と4人で楽しく食事をしました。でもふたりきりになると、『大丈夫?』『無理すんなよ』ということくらいしか言わない。他愛ない会話ができなくなってしまった……」
【こちらの記事も読まれています】