私自身も今回の出版翻訳家デビューサポート企画で出版社を紹介させていただいていますが、企画書や試訳のクオリティが高いので検討に値するという前提があり、その上できちんとお仕事をまっとうされるだろうという判断があってのことです。もちろん、紹介できるのは私に伝手がある場合に限りますし、紹介したからといって企画が通るわけでもありません(最近は「出版社を紹介してほしい」「出版翻訳したい」というご相談が多いので、個人セッションで対応しています。ご希望の方はそちらからご連絡ください)。

学校に通っているわけでもないし、出版しているような翻訳家もまわりにいない場合でも、単発講座などでチャンスはあります。第61回「小説翻訳の近道③」の内容をぜひ参考にしてください。

私も人に紹介をお願いすることがあります。その時に心がけていることをお伝えしますね。

まずは、自分が何者なのかを伝えること。相手と面識がない場合、不信感を持たれてしまうかもしれないので、「怪しい者ではないですよ」ということをまず伝えます。

企画書と試訳はしっかり準備をします。そして紹介をしてほしい旨をできるだけフォーマルな形でお願いするようにしています。たとえばメールアドレスがわかる場合でも住所がわかれば、メールではなく郵送で手書きの手紙を添えます。このあたりは人によっても、世代によっても感覚が違うでしょう。SNSではなくメールで連絡があったことで十分フォーマルだと捉える方もいると思います。ただ、手書きで手紙を書く人が減った分、そこまでする人は少ないので、目に留まりやすいというメリットがあります。日ごろ多くの依頼を受けている方ほど、依頼の仕方によって、応じるかどうかの判断が分かれます。十分に気を配るようにしましょう。

さらに、なぜその方に頼んだのかを伝えます。「自分が持ち込みたい出版社からその方が本を出しているから」という場合は、その本についての感想も伝えるといいでしょう。「どこに持ち込んだらいいのかわからないけれど、その方ならどこか知っていそうだから」という場合でも、その方の活動内容を調べて、それについての感想や自分との接点を伝えることが大切です。

他に知っている翻訳家や出版関係者がいなくて、たまたま知り合う機会があった相手に頼む場合、「他に知らないから」ということを伝えるのも正直でいいのですが、その場合でも「他に頼れる方がいないのでお願いします」というように、「他ならぬあなたにぜひお願いしたい」というニュアンスを出したいものです。「誰でもいいけどあなたくらいしか知らないんで頼んでます」という態度では、相手も応じる気にはならないでしょう。

「厚かましくていやだな」と思われるか、「厚かましいけど、おもしろいな」と思われるか。そこで紹介してくれるかどうかも変わってきますので、工夫を凝らしてみてくださいね。


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