◆流産と共に生きる

 もうすぐ、第二子の出産予定日です。私の心は落ち着いている時もあれば、ふとした瞬間ざわつきます。この記事を書いている最中も、平常心を保っている時と涙目になる時があります。幸い悲しみは長く続きません。

 周囲の人から「2人目はほしい?」と聞かれることがあります。その時は「ほしいけど、流産したの」と言うようにしています。反応は人それぞれです。「失礼な質問をしてごめん」と謝る人もいれば、「よくあることだよね。辛かったね」と真剣な眼差しを返す人も。事実を告げる時はいつもドキドキしますが、話して嫌な思いをしたことはありません。

 今後、私は子供を産めるのか分かりません。将来に期待もあれば、2度目の流産もあり得るので大きな不安もあります。流産経験者にとって次の妊娠は悲喜こもごもなのです。

 出産予定日には夫と久しぶりにお墓参りに行きます。この特別な追悼に娘を巻き込むべきなのか否か、今はまだ自分の中で判断を下せていません。私はきっとまた墓石の前で号泣して、泣き止んで、前を向いて。毎年同じことを繰り返すかもしれません。流産は閉じられる人生の一幕ではなく、忘れることのない人生の一部だから。

<文/町田文 医療監修/水谷佳敬>

【水谷佳敬】

2006年東邦大学医学部卒。

亀田総合病院にて家庭医療研修修了、長崎医療センターで産婦人科研修。さんむ医療センターで総合診療科・産婦人科を兼務。2022年6月よりファミール産院いちかわ勤務。無痛分娩などに従事。医療従事者者向けの講演・執筆など多数。産婦人科専門医・母体保護法指定医、家庭医療専門医・指導医。

【町田文】

東京都出身。2005年からドイツ在住。ミュンヘンでドイツ人の夫と娘と暮らす。アウグスブルグ大学社会学科修士課程修了。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。「時事ドットコム」(時事通信)、「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)、「Vesta」(味の素食の文化センター)などに寄稿。