みなさんは「流産」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?出産願望が(まだ)ない人には無縁かもしれません。実は流産(=妊娠22週より前に妊娠が終わること)に至る確率は妊娠全体で15パーセント程度と言われています。その危険性は年齢があがるごとに顕著に増加することが知られています。中には流産を2、3度繰り返す女性もいます。

 ドイツ在住の私も2022年2月、35歳のときに妊娠して、8週目で流産を経験しました。早期流産のほとんどは原因を探ることができません。ただ自分の体内で命が消えるという事実は、たとえ極小の胎児でも辛い喪失感を与えます。ここでは約半年間の私の心境の変化と家族(ドイツ人の夫と4歳の長女)との立ち直り方を綴ります。

◆軽い出血で受診し、流産が発覚

流産
※写真はイメージです
 第二子を妊娠したのは2022年2月。私も夫も待ち望んだ妊娠でした。しばらくは順調だったのですが、4月半ばにイースター休暇(金~月までの4連休)があり、その初日から軽い出血が始まりました。月経に比べると微量で、痛みはなし。

 妊娠初期に出血した友人がいるから、インターネットにもそれはあり得ると書いてあるから、と前向きに考えながら過ごしていました。それでも<念のため>連休明けにお世話になっている産婦人科に電話すると「今日来られますか」と。夫も気になっていたので二人で向かいました。

 この産婦人科医は娘の出産にも立ち会った人で、ドイツ人ですが例えると中谷美紀風の容姿と落ち着きがあります。「心拍を確認できません」、「体長を見るかぎり、8週目から成長していません」(当時は10週目)と言われると<流産>という言葉が出なくても、何が起こったのかすぐに理解できました。夫は窓の方を向き、涙目でした。

 私達は「はい」、「はい」と静かな声で医師の話の流れに沿うだけでした。感情的にならなかったのは最悪の事態もあり得ると予想していたからかもしれません。欠勤届(※1)と流産手術を行う病院の紹介状をもらい、10分後には診療所を出ました。

「あなたは何も悪くないですからね」と別れ際に言われました。私達は元々する予定だった買い物を済ませて帰宅しました。「よくあることだよね」などと少し会話を挟みながら。二人ともしばらく心が空っぽでした。

(※1 ドイツでは医者が欠勤届を発行し、病人が勤務先に提出します。)