世の中には夢を描いて邁進する人がおられます。本コラムをお読みの方もそうかもしれません。でも、その陰には、苦しい家庭環境ゆえに頑張るしか自己の存在理由を証明できないケースもあることでしょう。世間体には「良い子」を演じ続ける。しんどい親子関係の改善を願い、親からの無償の愛を切望する。けれども叶わずに落胆する。そのループにはまるケースもあるのです。

頑張ることは尊い事です。自分の努力の結果、社会のお役に立てるのであれば、そのひたむきさは報われたことになります。しかし、心の中の空虚さ、条件付きの愛しか知らずに育った場合、自分の存在が報われない悲しさ。それは本人を苦しめ続けます。

私は悩みに悩んだ結果、自らの置かれた親子状況を書くことを決めました。「毒親」の負の連鎖を断ち切るためには、これしか手段がなかったのです。そのような思いを込めて、過日、日経新聞の「私見卓見」にも取り上げていただきました。何世代も続きかねない負のバトンリレーを食い止めるためにも、自らの「頑張り」がどこから来ているのかを考え、根本原因に向き合い、一人でも多くの方が辛い状況から希望を見出せることを願っています。

(2022年11月1日)


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