最近の私にとってのビッグニュースは何と言っても「自動通訳機」。CMでおなじみの某メーカーがいよいよ同時通訳機を販売するとの記事を読みました。AIを駆使した自動「翻訳」はすっかりおなじみですが、音声で通訳をしてくれる自動通訳機は、かつて夢また夢と言われていたのですよね。ドラえもんの「ほんやくコンニャク」がまさにリアルになったことを意味します。

メーカーのサイトを覗いてみましたが、いやはや素晴らしいの何の!テレビCMではよくフリーズドライのお味噌汁を料亭の達人が味見して、感嘆する光景が映し出されますが、まさにそのような感じ。完全に脱帽です。でも、マッサージチェアや美顔ローラーがどれほど高性能になっても、やはり「人」にリアルに施術してもらいたいというのが人間のココロ。よって、私の職業ももう少しは持ちこたえてくれるだろうなと想像しています。そのためには、お客様に喜んでいただける通訳者を目指して頑張ります。

さて、今回のテーマはこの「頑張る」というキーワード。通訳業に限らず、何か目標に向かってひたむきに猛進してきた人たちにとり、自分のヤリタイコトが実現できる人生は本当に幸せです。私自身、紆余曲折を経て通訳の仕事にかかわるようになりましたが、その間には多くの失敗や遠回り、猛省などがありました。それでも今に至るまで継続しているのは、ひとえにこの仕事をこよなく愛しているからです。

ただ私の場合、もう一つ理由があります。それは、このコラムでも何度か書いてきた「親子関係」です(第515回、553回)。人生の折り返し地点を過ぎた今なお、このトピックが私の中では大きいものであり続けています。

通訳者を目指したのも私の場合、最初から夢見たからではありません。物心ついたころから家庭の中が苦しく、そこから目を背けて現実を忘れるために私は何かを必要としていました。それが「勉強」でした。周囲の気配を忘れてひたすら学ぶこと。それは学校に在籍している間は「テストの結果」となり反映されました。集中して勉強する、学習時間を増やす。これはそのまま成績という形で功を奏するのです。私にとっては最大の現実逃避であり救いでもありました。